秘密の地図を描こう

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 ようやく、講義がコース別になった。今まで一緒にいた者達もそれぞれの専門の講義が増えていけば、一日中顔を見ることはなくなるのだろう。
 もっとも、とシンは呟く。
「……レイとルナも一緒か」
 妥当と言えば妥当ではないか。そう付け加える。
「何だ? 俺たちが一緒では不満なのか?」
「そうよ! 第一、志望コースが一緒だったって、知っていたんじゃないの?」
 二人が即座にこう言い返してくる。
「そう言うわけじゃねぇけど……ただ、また口うるさくされるな、って思っただけだよ」
 あれこれと、とシンは言う。
「それは、あんたが適当だからでしょう!」
 誰も好きで口うるさくしているわけではない、とルナマリアがかみついてくる。それだけならばまだしも、同意をするようにレイがうなずいて見せた。
「レイ!」
「俺とお前は同室だからな。仕方がない」
 何かあれば連帯責任だ。そう言われては反論できない。
「悔しかったら、自分できちんとできるようになれば?」
 さらにルナマリアが追い打ちをかけてくれる。
「わかったよ!」
 ここまで言われて引き下がるのは男じゃない。
「やってやろうじゃん」
 その瞬間、二人がしてやったりという表情を作ったのは自分の見間違いではないだろう。
 ひょっとして、自分はうまく乗せられたのか?
 そう思ったときにはもう遅かった。

 それにしても、専門的な内容になるといきなり難度が上がる。
「……頭の中をプログラムが飛び交っている……」
 ベッドに突っ伏しながらシンはこう呟く。
「確かに……だが、最終的にOSは自力で何とかするものだからな」
 自分に合わせて調整するのは、とレイはまじめな口調で言い返してくる。それだけではない。彼はパソコンに向かって今日の復習をしているようだ。
「本当、お前ってまじめだな」
 あきれているわけでも感心しているわけでもないが、思わずこう言ってしまう。
「基本を身につけなければ、後々困るのは自分だ」
 やりたいことがあるからな、と彼は続けた。
「そう言うところがまじめだって言っているんだけどな」
 自分だって、そのくらいはわかっている。
 ただ、あれだけ詰め込まれた後にさらに、と言う気力がないだけだ。
「今、きちんと理解しておかないと、後々、ますます苦労することになる」
 実技が日常的になれば、間違いなく、帰ってきてから勉強などできる余裕がなくなる。
「それに……できれば、このまま《紅》を身にまとっていたいからな」
 気を抜けば、いつ、誰に抜かれるかわからない。だから、と続けられる。
「……そう、なのか?」
「知り合いから聞いたところでは、な」
 もっとも、その知り合いがアカデミーにいたのは戦争中だったが、と彼は続けた。
「今の状況ではどうか、俺にはわからない」
 それでも覚悟しておいた方がいいのではないか。そう言われれば、シンも無視できなくなる。
「……仕方がない。やるか」
 そうすれば、頭の中で渦巻いているこのプログラムも落ち着いてくれるかもしれない。そう言いながら体を起こす。
「そうしておけ」
 レイが小さく笑った。
「お前に言われたからじゃないからな!」
 反射的にこう言い返す。そうすれば、何故か、ますます彼の笑みが深まった。

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最遊釈厄伝